教師

【社員インタビュー】岩下 裕幸/理科・プログラミング

出身大学:九州大学 入社:2016年中途入社 前職:ITコンサルタント、エネルギー関連メーカー

生徒の興味をくすぐるのがやりがい。好きは、最大の動力源になるから。

昔、英進館で出会った生徒に、こんな男の子がいました。
彼の趣味は、石の採集。休日にはマイナスドライバーとハンマーを持って山野に出かけ、珍しい石を見つけたらコレクションに加えます。なんと彼は小学4年生にして、図鑑に載っている約300種類以上もの岩石や鉱物を暗記し、見分けることができたのです。もちろん、地学をはじめ理科は大の得意。好きなものを突き詰めるために学ぶ。彼が実践しているのは、まさにアクティブラーニングそのものでした。

子どもの頃は、自分の好きなものへの知識欲は尽きないもの。「どうやってこの石はできたのか?」「蒸気機関車はなぜ動くのか?」その疑問に答えてくれるのは、地球の歴史や物理、化学などの知識に他なりません。同じ勉強でも、興味関心を突き詰めるための学びならば、苦にならない人も多いでしょう。頭に詰め込むだけの勉強ではなく、自分の好きをきっかけにした学びの方がうんと面白いし、次から次に知りたいという欲求が沸いてくるはず。ならば、自分から楽しんで勉強してもらうための、興味開発から始まる授業があってもいいんじゃないか。英進館に入社する際、そんなことを社長に伝えたのを覚えています。
もともと、私は教員志望。でも新卒で入社したのは、ベンチャー系のITコンサル企業でした。
教員の道を選ばなかったのには理由があります。一つめは、学生時代にプログラミングを学んでいたことで、IT業界に興味がわいたから。二つめは、当時読んでいた本に『これからの時代を生き抜くための三種の神器は、英語とITと金融である。』と書かれていたこと。教育業界への転身は経験を積んでからでも遅くないと、まずはスキル会得のため民間企業へ就職することを決意。そこで3年間、大手証券会社のトレーディングシステム開発を担当していました。ベンチャーだったので、毎日ハードでしたね…。とにかくがむしゃらに学び取って、成長してやろうという気持ちだけで乗り越えていました。あの時の経験があるから、今でも苦しい時に頑張れる。自分の社会人としての揺るがない基礎となったと思います。
英進館への入社の転機となったのは、30歳で福岡への帰郷を決めたこと。当時は関西のエネルギー関連メーカーで診断士として、世界中の発電所やコンビナートを飛び回り、省エネコンサルの仕事をしていました。福岡で営業所長となる道もありましたが、一番のやりがいだった海外出張がなくなることがネックとなり、転職を考えることに。教員志望、かつ英進館の卒館生だったこともあり、すぐに英進館が候補に上がりました。決め手は、地球温暖化や環境への知識を授業を通して生徒に伝えることで、将来環境ビジネスで活躍する子どもが増えたら面白いし、社会的な意義も大きいと思ったから。前職で培ったITと金融、そして科学技術や環境問題、それら知識を絡めた話をしながら授業ができるって、自分にとっても面白い体験になりそうじゃないですか!大学新卒で教師になっていたら、きっと持ちえなかった視点ですよね。
入社後の私は傍流教師だったと思います。発電所ターミナルや巨大なタービンの間近でエネルギー診断を行ったこと、50mのタワーの先端温度を測るため命綱ひとつで登ったこと、自動車や食品工場の内部はどうなっているのかなど、単元と経験談を絡めたトークが、私の授業の進め方でした。教えることが苦手な先生も多い「エネルギー変換」の単元は、私の得意分野でした。
中でも一番生徒にウケたのは、昆虫食の話。昆虫は貴重なタンパク源、これから世界で昆虫食は普及していくという話から、タイの屋台で食べたサソリについて話したところ、生徒たちは大盛り上がり。興味を持って聞くから記憶に残るのでしょう。数年ぶりに会った生徒たちから「あの話、まだ覚えてますよ!」と声をかけてもらうこともあります。他分野の知識や経験をもとにした授業ができるのは、転職組の強みですね。
私の授業を受けたからといって、一朝一夕に成績が伸びるなんてことはありません。でも生徒から「理科が一番好きな科目になりました。」と言われたり、保護者の方から「自分から理科を勉強することが増えたようです。」と言葉をいただくと、生徒の興味をくすぐるきっかけになれているのだと思えて嬉しいんです。成績として結果が出るのに少し時間がかかったとしても、理科を好きになって自発的に勉強をしてくれることの方が、生徒の人生にとって大切なことだと思うから。そういう意味でSTEAM教育には興味があります。知識を得ることで子どもたちの”わくわく"を刺激し、創造のきっかけとなれば嬉しいです。
私が入社時から常々伝えていたのは「新しいことがしたい」ということ。「自立した社会人の育成」という観点から、英進館は『受験勉強+α』のカリキュラムを含めて他塾と比べても多角的な視点で事業展開を行なっています。入社を決めたのも、そんな英進館だからこそできる新規事業があると考えたから。だからフランチャイズでのプログラミング授業を導入するという話を聞いた時は、すぐに企画書を作って社長に提案に行きました。「いいね、じゃあ来年からよろしく!」と二つ返事で、教室立ち上げから運営の全てを一任してもらいました。

プログラミング教室では、マインクラフトのPCソフトを使った授業を行なっています。プログラムを組むことでゲームの中のブロックを組み合わせ、設計した建物をつくります。しかしこの教室は、プログラマーの育成を目的としたものではありません。英進館の教育理念に則り、自分の力で考え、課題を解決するための課題発見力を養うことこそが、このプログラミング教室の目的なのです。まずは自分が思い描いた理想の設計図と、出来上がった建物の違いを見つけること。次にそのギャップをどう埋めるかを考える。その繰り返しの中で、自分で試行錯誤する力を身につけていくのです。最初は失敗して当然。だから失敗しても「ドンマイ!」なんて言いません。「じゃあ、次はどうするか?」と前向きな思考を育てる場でもあるのです。プログラミングを通して何かを突き詰めて達成した経験があれば、勉強でも何でも頑張れる糧となるはずだから。
また、現在プログラミングに新しいコンテンツを掛け合わせた授業企画を考案中です。たとえば、以前開催した『プログラミング×防災』のワークショップ。プログラミングの技術でデジタルマップをつくり、実際に街歩きをしながら危険箇所を入力することで、自分たちだけのハザードマップを作成しました。ITの力で、今まで不可能だったことが次々と実現していく、そんな実体験を通して、プログラミングに関心を持ってもらう。今夏実施の新企画も現在進行中です。

今や次から次へと新アイディアと新技術とが生み出される、激変の時代。学生時代の勉強がそのまま、10年20年先で通用するとも限らない。だからこそ私たちに求められるのは、知識をただ詰め込むことではなく、自らの意志で考え、常に学び直そうとするマインドを身に付けてもらうことです。
私は現在、経営学を勉強中。スタッフの採用、集客方法、会計…などプログラミング教室の運営を行う上で、自分に足りないものは経営視点だと気付かされたから。新しい物事を求めるからには、常に学び続けなければいけません。自分が努力していないと、生徒にも「頑張れ」って言えませんから。もちろん、「しんどいなあ」と思う時もありますよ。でも英進館にとっても自分自身にとっても、そして子どもたちにとっても、確実に意味のあることを任せてもらえていると思うから、頑張れる。過去の自分が学んだことが、教師という仕事で活きた実感もある。だから、どれだけ年齢を重ねたとしても自らの学ぶ手は休ませたくないと思うんです。